また、前半のハイライトであるI Shot The Sheriffも、時に速射砲のような速いフレーズを織り込みながらクラプトンらしい歌心溢れるフレーズ構成が素晴らしい出来映えでした。近年は老齢につき、この曲での目を見張るようなプレイは影を潜めることが多かったのですが、この日は違いました。ハイライト曲できちんとハイライトのプレイを持ってくるクラプトン、さすがです。
そしてアコースティックセットでのSam Hallの前には、クラプトンがはっきり「ジェフに捧げる」とコメントしています。オープニング曲といい、この曲といい、やはりクラプトンには、60年代から同じ釜の飯を食ってきたとも言える友ジェフ・ベックを失った寂しさは相当堪えているのでしょう。その心中を慮って聴いていただきたい曲です。また、ゲイリー・ブルッカーを追悼するTears in Heavenにおける”青い影”の挿入は、初日がオルガンとギターのユニゾンによるものだったのが、この日はオルガンだけに変わりました。やはりこの方が原曲のイメージどおりでしっくり来ます。
そして何より価値があるのは、レギュラーセットラストのLaylaのパフォーマンスクオリティが初日より格段に高まったことでしょう。イントロの7連フレーズは従来からクラプトンが担当してきたのですが、高齢から来るものなのか、指が思うように動かず、危ういプレイを露呈したのが初日でした。しかしこの日はイントロのそれをドイルに任せ、クラプトンはコードワークに専念、それが奏功してスムーズに歌に入れています(これは70年代のジョージ・テリー以来のことでしょう)。その結果、声もしっかり出ていて問題なく歌え、バンド全体としてもタイトな出来映えとなりました。初日のテイクとは雲泥の差です。反省すべき点を素早く改善し、プレイクオリティを高めてきたクラプトン。これぞ、プロフェッショナリズムですね。後奏のクラプトンのソロについては、初日も涙ぐましいまでに頑張っていましたので、この日も同レベルの味わい深いプレイが聴けます。
Disc 1 (59:01)
1. Intro.
2. Blue Rainbow
3. Pretending
4. Key To The Highway
5. Hoochie Coochie Man
6. I Shot The Sheriff
7. Kind Hearted Woman
8. Nobody Knows You When You're Down And Out
9. Call Me The Breeze
10. Sam Hall
11. Tears In Heaven
12. Kerry
Disc 2 (47:40)
1. Badge
2. Wonderful Tonight
3. Crossroads
4. Little Queen of Spades
5. Layla
6. High Time We Went
Eric Clapton - guitar, vocals
Doyle Bramhall Ⅱ - guitar, vocals
Chris Stainton - piano, keyboards
Paul Carrack - organ, keyboards, vocals
Nathan East - bass
Sonny Emory - drums
Sharon White - backing vocals
Katy Kissoon - backing vocals