阿部賢一著、100分de名著 「ヴァーツラフ・ハヴェル；『力なき者たちの力』」です（NHK出版、2020年2月刊）。状態は未使用に近く、非常に良好です。送料は、クリックポストで185円です。

★内容：　1989年に「ビロード革命」を成し遂げ、チェコ大統領を務めたヴァーツラフ・ハヴェルの主著『力なき者たちの力（The Power of the Powerless; Moc bezmocnch）』がいま再び、脚光を浴びている。豊かな消費社会を享受しながらも、高度な情報統制や、個人生活の監視が巧みに強化されつつある現代社会は、たやすく「ポスト全体主義」体制に取りこまれていく可能性がある。本作を現代視点から読み解くことで、現代社会の危機にどう向き合ったらよいかを学ぶとともに、全体主義に絡めとられないために何が必要か、「今、ここ」において何をすべきかを考える。

　1970年代、チェコスロバキアは過酷な全体主義体制下にあり、その中で果敢に批判を続けたハヴェルは何度も投獄され、出所しても秘密警察による厳しい監視にさらされる。この体制に一人の人間として抵抗を続けていく方法はあり得るのか？ 全体主義は、消費社会の価値観と緊密に結びつく形で「ポスト全体主義」という新たな段階にきた。強圧的独裁ではなく、「精神的・倫理的な高潔さと引き換えに、物質的な安定を犠牲にしたくない」という人々の欲望につけこむかたちで、高度な監視システムと個人の生を複雑に縛るルールをいきわたらせ、市民らは相互監視と忖度によって互いに従順になるように促し合う。このような社会では既存の政治綱領などは意味を持たず、それより「思っていることを自由に表現できる」、「監視されない」、「威厳をもって人間らしく暮らせる」といった基本的な「生の領域」に働きかける新しい運動が必要である。ハヴェルは、地下出版や真実を訴える音楽家グループらと緊密に連携しながら、地道なかたちで抵抗の基盤を形成し続け、それらの積み重ねによって強固な体制に風穴を開け、ついに「ビロード革命」を成し遂げる。本作には、彼が仲間たちと積み重ねてきた経験や知恵、展開してきた運動のリアルなアイデアや方法が書き綴られている。

★ヴァーツラフ・ハヴェル（Vclav Havel）は1936年、プラハ生まれ。実家は裕福な名家だったが、第2次大戦後の共産主義体制で財産を没収され、ハヴェルはその出自のため進路にも掣肘が加えられた。兵役を経てプラハの劇場に職を得、演劇の道に入る。のち『庭の祭り』、『通達』、『集中の妨げられた可能性』など数々の戯曲を執筆した。1968年の「プラハの春」を支持して以来、反体制運動の指導者として活動し、1977年には人権擁護を求める「憲章77」を発表。その後、幾度となく逮捕・投獄されるが、1989年「市民フォーラム」を結成して民主化運動を主導し、共産党政権打破に中心的な役割を果たした（ビロード革命）。同年、チェコスロバキア連邦最後の大統領に選出され、1993年に新たに成立したチェコの初代大統領に就任（2003年まで）。著作として戯曲のほか『ハヴェル自伝 ― 抵抗の半生』、『プラハ獄中記 ― 妻オルガへの手紙』、『力なき者たちの力』などが知られる。2011年死去（享年75）。

★著者、阿部賢一は1972年、東京生まれ。東京外国語大学大学院博士後期課程修了、博士（文学）。パリ第IV大学（DE取得）、カレル大学で学ぶ。 現在、東京大学人文社会系研究科准教授。専門は中東欧文学、比較文学。著書に『イジー・コラーシュの詩学』、『複数形のプラハ』、『カレル・タイゲ ポエジーの探求者』など。訳書に、ボフミル・フラバル『わたしは英国王に給仕した』、同『剃髪式』、パトリク・オウジェドニーク『エウロペアナ』（共訳；日本翻訳大賞）、デレク・セイヤー『プラハ、20世紀の首都』（共訳、同）、カレル・ヤロミール・エルベン『命の水チェコの民話集』、ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』など。

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